小濱明人さんとのレコーディングのこと 2

うちの亡くなったおじいさんは昔、趣味で尺八をやっていた。
だから尺八という楽器やその音には、多少慣れ親しんではいたのです。
小さい頃に少し吹かせてもらった記憶があるけど、全然音が出なくてダメだったな。

当時おじいさんが使っていた尺八は、実家の畳の部屋の押し入れに仕舞われていた。
せっかく尺八を吹く方に知り合ったのだから、一度見てもらおうということになり、
実家で小濱さんに見てもらい、試しに吹いてもらったのです。
何本かあったうちの1本は、なかなか悪くない物のようだった。

うちの親の意向もあり、
もしよろしければ仕舞っておくのももったいないので使ってほしい、
という旨を伝えたところ、快く使って頂くことになった。
そしてその部屋の祖父母の仏壇の前に座りお線香をあげて、
「たむけ」という死者に向けての曲を吹いてくれたのです。

僕は母とそれを聴いていて、
なんとも静かな気持ちになったのをとても鮮明に記憶している。
尺八の独特な音と、小濱さんの音、そして人柄とが相まって、
なにかをうちの祖父母に送り届けてもらえたような気がした。
すごく「絶対的」なメッセージだったなぁ。

尺八の音は本当に不思議な音なんだよね。
日本的であり、それでいて全く国籍なんか無いような音がする。
あの空気がすれるような音が、なんとも言えないです。

小濱明人さんとのレコーディングのこと 3 につづきます。